不安な社会

 秋葉原で殺人があった。いろいろな論評が新聞・テレビで発表された。自爆テロである、と言うものもあった。また、無理心中、というのもあった。どちらもうなずける内容である。彼は派遣社員として働いていた。小中学校までは優等生であったらしい。おそらくこのころにエリート意識が芽生えていたであろう。しかし、高校生の頃から成績が低下してきて挫折感を味わったであろう。そして雇用の不安定な派遣社員として働いている。何時解雇されるかわからない不安な状態であったのであろう。この不安な状況は正社員として働いていたとしても同じであるだろう。正社員として働いていたとしても、聞くところによると、サービス残業はあたりまで、時給にすると派遣社員よりも少ないという企業がかなり多いらしい。そして生涯雇用というこれまでの制度は崩れて、何時リストラされるかわからないと言う状況らしい。これでは不安感にさいなまれるだろう。
 私は公立中学校の社会科教師であった。比較的雇用が保障された職業であるだろう。社会科教育に関していくつかの書籍や教育専門誌に執筆してきた。しかし、その私も指導力不足の教師と指名される不安があった。客観的にはその心配は無用なのだろうが、指導力不足教師の基準は何もないのである。あれる中学校では、教師の指導に従わない生徒もいるのである。このような生徒はどこの中学校にもいるのである。またモンスターペアレントもどこの中学校にもいるのである。どんな教師でもこのような状況に遭遇することはあり得るのである。そして指導力不足教師であると指名されたら、それに対して弁明をする事は不可能なのである。そのような不安がつきまとっていた。そのような指名をされたら、辞職せざるを得ないであろうと思っていた。
 昨年定年退職した。ほっとした。しかし、今度は年金制度の崩壊やインフレなどの不安が起こってきた。現在の日本はこのような不安に満ちた社会なのだろう。